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経営事項審査の最終評点P点は、下記5項目にて評価されています。
上記のうち、Y点は基準年度の財務諸表の状況により決まります。Y点では絶対値でみる営業キャッシュフロー・利益剰余金の項目があるため、中小企業では一定の限界があるものの、毎年、適正な利益をあげ、自己資本を充実させ、負債を極力なくしていく等の基本的事項により、かなりの高評価につなげていくことが可能です。
経営事項審査の加点項目や評点の計算方法については公表されており、その意味するところや評点に及ぼす影響については明瞭です。この意味するところと評点に与える影響を感覚的に把握し、意識しておくことはもちろん大切ですが、加点項目や評点計算については、近年頻繁に改正が行われており、注意が怠れないと同時に内容がわかりにくいものもあります。
完工高の評価については、業種別完工高が多ければ多いほど業種別評価は上がりますが、年間平均完工高の大きさに比例して点数が伸びるのではなく、大きくなるに従い、点数の伸び率が逓減されるようになっています。
また工事種類別平均完工高X1とは別に、元請工事高が大きいと、別途技術力評点Zにプラスの影響を与えます。X1と同じく元請完工高の大きさに比例して点数が伸びるのではなく、元請完工高が大きくなるに従い、点数の伸び率が逓減されるようになっています。
技術者加点における評価において、1級技術者は5点、2級技術者は2点、その他実務経験技術者は1点というのは、従来から比較的定着しているところです。平成20年4月に基幹技能者が、令和2年4月にはCCUSにおけるレベル3、レベル4技能者が、令和3年4月には1級技士補が追加され、下記の表のようになっています。ただし、下記表の技術職員数値は、そのまま結果通知の最終評点P点として加算されるわけではありません。各技術者の方の各数値の合計点数をZ1評点に引き直し、さらに前述の元請完工高を考慮したうえで、0.25を乗じた数値が最終評点に影響する数値となります。
1級技術者 |
監理技術者資格者証保有かつ監理技術者講習受講 |
6点 |
---|---|---|
1級技術者であって上以外の者 |
5点 | |
監理技術者を補佐するものとして配置可能な1級技士補 |
4点 | |
基幹技能者・レベル4技能者 |
3点 | |
2級技士・1級技能士・レベル3技能者 |
2点 | |
その他・実務経験10年等 |
1点 |
また、このZ1評点も技術職員数値が大きくなるに従い、点数の伸び率が逓減されるようになっています。
CCUSにおいてレベルアップすることは後述しますW評点における「知識及び技術又は技術の向上に関する取り組みの状況」に影響を及ぼすだけでなく、レベル3・レベル4技能者となれば、上記のとおり技術者としての加点対象となります。ただし、現実的にはレベル4技能者となるためには基幹技能者であることや1級技術者であることを求められることが多く、現実的な評価への影響は限られてくる場面が多いかと思います。また許可業種に対応する能力評価対象職種であることが必要ですが、能力評価(レベル判定)申請では、職種に応じた就労日数が必要となってくるため、CCUSの技能者登録において適切な職種コードの選択が重要です。
社会保険・雇用保険については、今では社会保険・雇用保険における適正加入確認の意味を持つのみで現在では評点アップの効果はありません。また令和2年10月以降、適正な社会保険・雇用保険の加入は建設業許可要件の1つとなりましたので、未加入ということは基本的にないはずですが、未加入の場合、P点に換算すると1つの項目につき概ね52.5点程度(R5年8月14日以降を審査基準日とする場合)下がることになります。また現実的には、経審結果が未加入状態のままで登録を受け付けてくれる発注自治体もないように思います。ここで大切なのは適正加入ですので、加入義務がない事業体にまで加入を強制するものではありません。例えば建設国保と厚生年金に加入されている場合や適用除外の場合にまで健康保険の加入を求めるものではありません。
建退共・退職金制度等は、対応方法、費用、評点に与える影響が非常にわかりやすく最も手軽な方法としてほとんどの事業者様にて対応されていることと思います。
評点アップ対策効果が大きく、1つの項目で最終評点P点において概ね19点程度(R5年8月14日以降を審査基準日とする場合)影響します。建退共と退職金制度それぞれの要件を満たせば2つの項目で加点対象となります。決算日までに対応すれば、すぐに評点に結び付けることができますが、建退共の履行証明発行は近時厳格化され、発行手続きに多くの書類を必要とすることもあります。また建退共と退職金制度は別々の加点項目ですが、社内でそれぞれの制度をどのように運用していくかの整理も必要です。
一定の要件を満たす法定外の労災保険が対象となり、評点に関しては上記退職金制度等と同じです。
経営事項審査の評価とは別に平成元年6月の品確法改正において公共工事等に従事する者の業務上の負傷等に対する補償に必要な金額を担保するための保険契約(法定外の労災保険)の保険料を予定価格へ反映することが、発注者等の責務として位置づけられています。
加点対象の重機は災害復旧に必要なものとして列挙されています。令和5年1月より建設機械の対象が拡大されましたが、建設機械の保有状況は技術者数と同じく台数が多くなるにつけ点数の伸びが逓減されるようになっています。
当然、年平均完工高の大きい会社ほど、建設業経理士一人当たりの与える影響は小さくなっていますので、同じ2級経理士の方が1名おられる会社でも会社の年間平均完工高により評点に与える影響は変わります。また年間平均完工高による大まかなライン枠に当てはめてW52点を求めますので、既に2級経理士が1名のおられる会社が2名になった場合、会社の状況によって多少伸びることもあれば評点に全く影響しないこともあります。経理士等の方の人数が同じ状況でも年間平均完工高が大きくなったことにより、完工高による評点はプラスに働いたとしても経理士等による評点は下がることいったこともあり得ます。
1級経理士1に対して2級0.4の割合になっていますが、最終評点P点では1級経理士が1名増えれば、何点影響するかは、前述の理由から特定できるものではありません。
例えば2級経理士が1名在籍している会社のP点への影響を年平均完工高別にみてみます。
2級経理士が2名になると下記になります。
令和5年4月以降の審査基準日の経営事項審査では、5年ごとに登録経理士講習の受講が必要となりました。
防災協定の締結は加点幅が大きく、最終評点P点で概ね26点程度(R5年8月14日以降を審査基準日とする場合)影響します。
所属する加入団体が締結されている場合がほとんどのように思いますが、地域によっては数社が共同して直接地元自治体と締結されていることもあります。
また経審で加点対象となる防災協定は建設分野における協定のみならず、兼業のある会社が、兼業部門にて所属自治体以外の自治体と協定を結ばれている場合も対象となります。
防災協定を登録自治体の独自加点としているところも多く見受けますが、通常、こちらにおいては一定の条件を設けているのが一般的です。
令和5年1月から従来のISO9001・ISO14001に加え、エコアクション21も対象となりました。ISO14001とエコアクション21の2重加点はありませんので、W8の点数は下記のようになります。
ISO9001登録有 | ISO9001登録無 | ||
---|---|---|---|
ISO14001登録有 |
エコアクション21登録有 |
10点 |
5点 |
エコアクション21登録無 |
|||
ISO14001登録無 |
エコアクション21登録有 |
8点 |
3点 |
エコアクション21登録無 |
5点 |
0点 |
P点に換算するとISO9001のみ、ISO14001のみ取得の場合で、概ね6点程度、エコアクション21のみ取得の場合、概ね4点程度(R5年8月14日以降を審査基準日とする場合)影響します。
経営事項審査の技術者名簿における35歳以下の技術者割合が15%以上の場合、P点にして概ね1点程度、35歳以下の技術者が1名でも増えた場合、概ね1点程度上がります。両方を満たした場合は、概ね2~3点程度上がります。評点に与える影響はほとんどありませんが、高齢化と人手不足が顕著の建設業界では、若年労働者の確保の努力は評点アップ以前の課題であると思います。
令和3年4月の改正により、新たに登場した「知識及び技術又は技術の向上に関する取り組みの状況」は、評点アップ対策に対する効果とその意図するところにつき、最もイメージのつきにくい項目かと思います。経審における評点への影響は、下記の式にて表されていますが、この式の意味するところを考えてみたいと思います。
個々での評価対象は、事業者における従業員の技術・技能教育訓練への取り組みです。建設業界では、監理監督的技術者と現場職人的技能者の大きく2つの業務パターンがあり、その両者が微妙に絡み合って業務が成りたっています。主に監理監督的業務の知識の向上の取り組みをCPD(継続的学習制度)により、主に現場職人的業務の技術の向上の取り組みをCCCUSに基づいた能力評価(レベル判定)制度により光をあて、その微妙に絡み合った業界の知識及び技術向上に関する取り組みの状況をともに評価しようとするものです。
ゼネコンのような大きな会社でも中小規模の建設会社でも、一人の従業員がそのどちらの業務も担うことは往々にしてありますが、どのような形態であれ、それに応じた従業員の技術・技能教育訓練の状況を評価しようとするものです。その微妙に絡み合っている尺度の異なる2つのものを同時に評価しようとするため、一見わかりにくい数式となっていますが、評価の対象の基本はCPDおよびCCUSにより、光をあてられた全従業員における知識・技術の向上です。加点幅は全従業員の方がめいっぱい取組んだとしても、P点換算で最高でも13点程度(R5年8月14日以降を審査基準日とする場合)ですので、通常の技術・技能教育訓練の取り組みに光をあてること自体に意味があると捉えたほうがいいかもしれません。
CPDについては、技術者系従事者の方全員が万遍なく毎年(認定団体により換算が違うため)一定単位を目標に取得することが、能力評価(レベル判定)制度においては、一定講習・一定資格とCCUSに登録された施工体制における就業履歴の蓄積等が、必要となります。
上記のCCUSにおける技能者のレベルアップの状況とは別にCCUSの導入状況自体が評価の対象となりました。(R5年8月14日以降を審査基準日とする場合)導入状況ですので単にCCUSの事業者登録をしただけでは加点対象とはなりません。CCUS上での現場・契約情報登録及びカードリーダーの設置等の技能労働者の就業履歴を蓄積するための措置を決算日前1年間の全元請工事において講じるか、全公共工事において講じる必要があります。